ネットワーク生態学2005シンポジウム
最近ネットワーク科学が注目されている.これは,ノードとリンクから構成されるネットワーク構造についての研究であり,物流,交通網,人間関係,ハイパーテキストのリンク関係,インターネットのルーティング,電力網,タンパク質の構造など,さまざまな分野に共通する研究である.これらの研究を進めることは,単に学術的な面だけでなく,たとえばサーチエンジンの質の向上や,カスケード故障をおこさない電力網などの面でも大きな利点が期待できる.
もちろん,私が関係しているソフトウェア科学会のネットワークが創発する知能研究会もそうだし,情報処理学会のネットワーク生態学研究グループもそうだ.後者が運営するのが,このシンポジウムだ.
今日,特に印象的だったのは,次の研究だった.
湯田聴夫, 小野直亮, 藤原義久(ATRネットワーク情報学研)
ソーシャルネットワーキングサービスのリンク特性とクラスター構造
題名がものものしいかもしれないが,一言で言えばこれは「mixiの人間関係ネットワーク」の分析だ(実は前日,福田くんとmixiを分析してみようか?と話していただけに,「やられたっ!」という感じだった).しかも,Newmanクラスター分析してみると,一般の人間関係ネットワークに見られない三層構造が観察されたらしい.これが何を意味するのかは現時点ではわからないが,SNS特有の現象が起こっているのかもしれない.ものすごく面白い.
また,有名な研究者であり,東大の社会ネットワーク研究所の所長である安田雪さんの基調講演にもやられた.いろいろ勉強になることばかりだったが,特に特許分析から導いた,学際的なコラボレーションのジレンマには,学ぶことが多かった.これは,「各メンバーの領域の類似度が低いほど,平均的なイノベーションの価値が下がる」ということで,つまり異分野の人材を集めても,たいていはうまくいかないということを示している.
面白いのは,実は画期的なイノベーションが起こるのも,各メンバーの領域の類似度が低い場合だということだ.結局,できる人が組まないとダメらしい.ただ,この「できる人」というのは,一口で言えば「オタク」のような人であり,専門を極めることができないでマネージャをやっている人間は「落ちこぼれ」ということだ(苦笑).これは,なぜ私の研究所がうまくいかないのか?を理論的に説明づけるものだった.
最後に,描画,グラフ,図に対する評価が日本では低すぎるということを強調していた.本業ではもちろん,LG3Dで何か面白いことをやってみたいものだ.