ウェブログの心理学

昔からウェブ日記の研究をおこなってきた認知心理学者である山下清美さんらによる名著.彼女の人工知能学会の研究会の招待講演は聴いていてずっと興味を持っていたが,書籍としても出版されたのを最近偶然発見.

ウェブログの心理学

ウェブログの心理学

「はじめに」に,「本書はそうした出版物(=単なるハウツー本)とは一線を画し,心理学者の視点からインターネット上のコミュニケーション全体の中でウェブログを位置づけることを目指している.」と書いてあるが,まさにそういう本.

この本の言うところの「ウェブ日記などの日本独自の流れを無視して,アメリカからブログツールが入ってきたことを大革命であるかのように喧伝する人」の軽薄な態度とは異なり,インターネット上のコミュニケーションを詳細に分析するとともに,日本特有の現象を見つけ出し,さらに実際にウェブ日記ウェブログがどのように発展してきたのかという歴史についても学者らしくしっかり記述している.

真面目にblogというものを考えたいと思っている人は一読の価値があるし,歴史的資料としての価値もあるだろう.この種の研究を技術の進歩と並行して進めることは,非常に重要だと思う.

なお,これを読んで,今は亡きエキサイト日記は,世の中的に見ても結構進んでいたんだな…というのを再確認.ただし,あれは多機能すぎて,かえって使いにくかったのだが.