Search Engine Strategies 2006

メモ代わりに簡単に書いておく.なお,私が興味あるのは,Web検索とWeb検索行動解析だけであり,ごく一部のセッションしか聞いていないことに注意されたい.

http://www.idg.co.jp/expo/ses/

一日目のYahoo! Japanのセッションは,ソーシャルサーチに重点を置いていた.それは,Web検索+コンテンツ+ソーシャルネットワーク+アカウント+マイ・ランクで実現するものらしい.少し前は,彼らはパーソナライズと言っていたと記憶しているが,やはりすぐ限界が見えたのではないかと思う.というのは,基本的に個人に対するパーソナライズでは個人の限界というものを超えられないために,情報を探すような創造的な行動の場合に対してはよい結果が得られない.その代わりに着目したのが,ソーシャルメディアらしく,要するに似たような興味を持つ他人の行動は参考になるということである.

その基本となるのはアカウントである.Yahoo! Japanでは,2006年3月の時点で1580万IDあるそうであり,118サービス中62サービスがログインを必要とするらしい.しかし,その後展示場でコーヒーを飲んでいたときに横の女性が,「Yahoo! Japanはログインを強要してくるのでめんどくさい」と言っていたのも重要であろう.個人同定をいかに自然におこなうか,また個人同定せずに目的の結果を出すかなど,さまざまな検討の余地がある.

なお,一クエリあたりのキーワード数(空白で分割して計算)が,2005年2月では1.36語だったのに,2006年2月には1.45語に増えたと言っていた.普通ならここで使うキーワード数が増えたと素直に考えるところだが,2005年10月に重要なカテゴリ検索からロボット検索への移行があるので,そのまま受け取るわけにはいかない.この辺が曖昧だということは,普段は社内でこのような議論を内部でしていないのかもしれない.

その後のオーバーチュア(Yahoo! Search Marketing)の話は大学生の検索行動分析であった.大学生を選んだのは,それが一般的な人間の社会人としての出発点であり,個人の消費行動(テレビなどの購入とか)が,そこで本格的に始まるかららしい.サーチエンジンが大学生の行動の重要な位置を占め,それが学年が高くなるほど強くなるということであり,まあ予想される結果である.

二日目の最初はgooのセッション.彼らはWeb検索に,CGM(Consumer Generated Media)と地域性を取り込もうとしているらしいが,詳しくは次の記事を見て頂きたい.

http://pcweb.mycom.co.jp/news/2006/04/21/360.html

gooの特徴は,彼らはあまりWeb的ではなく自然言語処理などの従来技術をフルに活用しようとしていることと,サービスのきめこまやかさかもしれない.たとえば,地図上で主要駅周辺のパノラマ写真を提供しはじめたそうだが,なかなかよいアイデアだと思う.また,mixi検索がNTTレゾナント社が提供していたのは知らなかった.他に面白いデータとしては,Web検索では約4割の人が問題を解決できていないことと,Web検索では1.3-1.5ページの検索結果を見るのに対して,画像検索では3-3.5ページ見ることだろうか.そこで多くのページ数の閲覧に対処するために,画像検索においてスクロール画像検索を導入しているそうである.

http://bsearch.goo.ne.jp/scrimg/

さて,一番期待していたネットレイティングスの日本人のWeb検索行動分析.このために毎年来ていると言っても過言ではない.最初から,最近のYahoo! Japanのトップページのリニューアルに言及する.な,なんと,この変更で画像検索の一週間のユニークユーザ数が,約50万人から約80万人に増えたそうなのだ.こういうことがわかっちゃうのはすごい.また,2005年10月のロボット検索への移行では,一人あたりのページビューが13%増加したらしい.

また,サーチエンジン会社のさまざまな比較があった.たとえば,日本ではリーチ(利用率)で比較するとYahoo!が64.5%,MSNが16.0%,Googleが34.7%,gooが5.5%であり,特にYahoo!Googleはまさに右肩上がりである.世界的に見ても,Y・M・Gの三社は強く,ヨーロッパではGoogleの利用率は7割ぐらいである.また,Googleは平均利用時間が多く(濃いユーザが多い・特に男性が多い),Yahoo!は平均利用回数が多い傾向にあるとか,利用者の重複はGoogle35%,Yahoo!65%に対して,23%もあるそうである.また,国際的にはディレクトリ検索はほとんど使われなくなっているが,日本に限っては29.7%も使われているらしい(なぜだろう?英語サイトに比べて数が少なくて利便性が低下しにくいとか???).gooに関しては,講演者からグラフではわからないが数値的には増えているとフォローがあったが,残念ながら上位3社と比べるとほとんど伸びていない.なお,gooの場合よりはWeb検索より教えてgooの方が大幅に多いそうである.

ちょっと面白いのは直前参照サイトで,Yahoo!トピックスがランキング上位に顔を出してくる.これはインターネット上のメディアとしては,Web検索と同じく重要なことかもしれない.この状況が,IERSS対応でニュースのRSS配信に移行した時にどうなるか興味深い.また,検索エンジンアフィリエイト広告を出しているamazon.co.jp,そしてCGMのブログや2ちゃんねるに誘導しやすいという結果も出ていたが,これは直感と一致するものであろう.

追記:関連記事がある.
http://japan.internet.com/wmnews/20060424/4.html

これらの話を聞いて,今後のWebサービス企業で重要なことは,互いに関係しているユーザ群の利用履歴を蓄積・分析し,それを利用することであることを再確認した.つまり,親の行動を見て成長する子供のように,今後はWeb上のサービスはユーザに使われるたびに学習していき,それを元により良いサービスを提供できるようになるということであろう.

ただし,これでは新興サービスは良い質のサービスが提供しにくいという本質的なジレンマが存在することになる.つまり,システムがよりよく振る舞うためには,それだけの履歴データが必要だが,それは一朝一夕には得られないからだ.このジレンマを解決する方法があるか,それとも解決できないでサービスの寡占化が進むのか,どちらだろうか?