OpenOffice.org・Project Looking GlassとSun Microsystems

どうも,kyukaのblogを見ると,酒の話ばかり書いて,この話題に触れないと殺されそうな雰囲気がする(笑)ので,しっかり書いておくことにする.kyukaに対するコメントも,ここに書いて頂いて結構である.


今日,サン・マイクロシステムズの横浜オフィスで,OpenOffice.org(OOo)とProject Looking Glass(LG3D)の日本人の中核メンバーが集まってミーティングをおこなった.テーマは,日本のオープンソースコミュニティとサン・マイクロシステムがどのような協調ができるかについてと,一部のオープンソースコミュニティに試験公開がはじまった翻訳やローカライズをサポートするSun Globalization Portal(特に,SunTransとSunGloss)のデモである.


ここで強調しておきたいのは,この2つのオープンソースコミュニティ以外のコミュニティの利用も想定されていることだ.この話は立ち上がったばかりであり,まだ体制もシステムもしっかり整っているわけではなく,以前からSunに要求を出していた2つの団体が最初の実験台となっただけだ.今後,どのような方向に進むかはまだわからないが,我々も利用したいという団体があれば,Sunに直接連絡してみるとよいだろう.


前半はOOoの話.すでにOOoOpenOffice/StarSuiteのヘルプをSun Microsystemsと共同して翻訳したらしく,それに試験的にSunTransを用いたらしい.その問題点はくそ遅いこと(…とか言っていたら,帰宅したらさっそく高速化した版をリリースしたという連絡が届いていた.どんどんバージョンが上がっているのはさすがだ.).


OOoのメンバーが抱える悩みは,日本からの貢献をいかにすみやかに反映して,それを多くの人間が簡単に検証できるかということで,私の他のアクティビティとまさに同じだった.


OOoの特殊な事情として,Sun Microsystemsが保守する10言語のデータは,Sun Microsystemsのデータベース内に格納され保守されることがある.これでは専用のツールを用いてアクセスしなければならないので,データをCVS上に置いて共有するオープンソース的形態と合わない上に,その同期が遅れているらしい.つまり,このままでは,現在どのようなデータがあるのかボランティアがすぐにわからないし,それをテストすることもできない.また,ボランティアから貢献もしにくいということで,Sunが保守する10言語に関しては,OOoが直接サポートする他の言語よりも逆に保守のアクティビティが低くなってしまう,また間違いの修正が諸事情でおこなわれないという問題を抱えているらしい.これを解決する手段としては,OOoがSunと同じ立場に立ち,Sunのツールを用いて作業するか,SunがOOoに歩み寄り,CVS上の更新を検証してデータベースにマージするなどの手法などが考えられるが,とりあえず,現在どのような方法でデータが保守・更新されているかを協力して調べることから始めることになった.


また,Sun Globalization Portalの使い方をデモしてもらった.問題点は,これをオープンソース活動でどのように利用していくかである.


LG3Dが要求していたのは,ユーザの理解を阻害しないように訳語は統一したいので,できれば訳語集を出して欲しいということであり,この目的としてはSunの用語を検索するSunGrossが役に立つと思う.


しかし,文書を分割してデータベースに格納し,対訳データとして管理し,翻訳を支援するツールであるSunTransはすぐに役にたたないかもしれない.というのは,一つはLG3D自体のドキュメントが,異なる人によって異なるスタイルで書かれており,対訳データがうまく適用できないこと,もう一つは翻訳文も統一しきれず異なるスタイルであるために,読み込み時に多数の衝突が発生し,この修正コストは無視できないかもしれないことだ.他にも,ドキュメント品質があまり高くないオープンソース活動に適用するには,なかなか難しい問題がありそうだ.


なお,Sunと同様に,オープンソース活動をサポートしてくれる企業・サービスとして,沖電気工業の「訳してねっと」がある.


http://www.yakushite.net/


SunTransは,どちらかと言えば文章の一致に基づく置換・変更であるが,「訳してねっと」は対訳辞書と対訳文例に基づく機械翻訳である.たとえば,ある程度の対訳辞書ができれば,未着手の文章ないしは更新が激しい文章をこれで閲覧してもらうことも可能だろう.


どちらのシステムもまだまだ摺り合わせが必要だが,Sunにせよ,沖電気にせよ,オープンソースコミュニティに対して実質的に貢献しようとしているところが嬉しい.また,より高度な利用ができるようにAPIを公開してもらえば,両者を組み合わせて利用することも可能になるかもしれない.