創造的研究とイベント的研究

ある大学の先生と話をした時に,ある研究成果で某社の腐り果てていた某製品(苦笑)を一気に復活し,その会社のその製品を使うユーザは100%その人の研究成果が理由だと断言してもいいと思っているくらい私が尊敬している,今は某国立研究所にいるM氏は,これから大変かもねえ…と言われてびっくりした.その理由は,そこで組織変更があり他部門と合併して,評価側に彼の分野の非専門家が増えたことらしい.


たとえば,最近はユビキタスが流行っていて,RFIDを大規模につけて…をしましたという研究も多い.このような場合は,要素技術としては一般的なものを使うが,何をしたのかが物として目に見えるし,予算も沢山消費し(苦笑),派手なので,非専門家の受けがいい.これを,ここでは「イベント的研究」と呼ぶことにする(注:ユビキタスの分野でも,創造的研究はあることに注意されたし).


この一番の長所は,予算さえ確保できれば,確実に毎年の成果を出すことができることだ.昔で言えば,ネットワークを構築しましたというのが近いかもしれないが,ネットワーク構築は非専門家にアピールするものではなかったと思う.


これに対して,創造的研究の場合には,「お蔵入りを披露しよう」という発想が出てくるように失敗が多く,とても着実に毎年目立った成果を出せるものではない.それに,専門家にとっては革新的で素晴らしくても,非専門家が必ずしも確実に体感できるとも限らない.もちろん天才M氏のような誰でもわかるような素晴らしい成果を出すことも期待できるのだが,そのM氏にしても毎年そんなホームランを打てるわけがない.


つまり,この2つの研究を同列に扱ってしまうと,創造的研究者の評価がどうしても低くなるのだ.これは,私の会社でも起こっていることなのだが,本当にそれでいいの???


そこで,私は創造的研究度を次のように定義することにする(笑).


創造的研究度=使用した年間予算(万円)÷年間論文数


年間予算からは人件費は除く.また,論文数は共著でも可としよう.私は,今年度は確実に20以下だ(苦笑)


まあ,研究にはいろいろな要求やフェーズがあるから,この数値が大きいからと言って悪いわけではないが,少なくとも,この数値が大きい研究者と小さい研究者を同列で評価すべきではないだろう.