Google東京R&Dセンター完成お披露目会

実は,会社をサボった真の理由はこれ.私は,社内の対Yahoo/Google戦略を進めているグループに名目上は所属させられていることと,部下がGoogleに転職した(実は私が転職を勧めた)ことが社内で問題となったことから,無用なトラブルを避けるために休暇にした,目的も元部下の元気な姿を見ることと情報収集であり,Googleに転職するつもりで行ったわけではない.


この名目はお披露目会だが,一番の目的は東京R&Dセンターのリクルートで,もちろん学生が大部分.それ以外にも,この業界のキーパーソンを招待していて,東大の喜連川先生,NIIの村田先生,神門先生,早稲田の山名先生などの大学の先生,そしてChasenを開発していた北内さんや私たちのような企業研究者など.全部で200名くらい.


GoogleのR&D戦略はPhDを中心とする極端な技術志向で,それを批判する人たちも多い.しかし,少なくとも現在のインターネット情報検索と関連サービスの鍵を握っていることは確かだ.まだ,独自のサーチエンジンを使用しているYahooやMSNはGoogleに対抗できる力を持っているが,日本企業は,すでに独自開発をあきらめてアウトソーシングしてしまったために,限定された応用開発しかできない状況に陥っている.


また技術者の視点からは,待遇がまったく異なることがわかる.たとえば,私の会社では,高いスキルを持った技術者が出世することはなくなり,早い段階で大学か他企業への転職を考慮せざるをえない状態になってしまっている.その結果,技術がわかる・業界に影響力を持つ人間が上層部に残らなくなり,有効な研究開発戦略を生み出せなくなった.つまり,「内側から見た富士通成果主義」の崩壊?」に書かれているのと同様に,成果主義の導入は実質を放棄して社内戦略に奔走する人たちを生み出してしまった(これについては,いつかもっと詳しく書くかもしれない).しかし,Googleは,それでスポイルされた技術者にも活躍できる場を与えてくれるだろう.


内側から見た富士通「成果主義」の崩壊 (ペーパーバックス)

内側から見た富士通「成果主義」の崩壊 (ペーパーバックス)


面白かったのは,雇用の対象とする分野がかなり多岐に渡ることで,ロボットやコンパイラまでも対象となる.実際に,JavaOne 2004の直後に,TigerGenericsをはじめとするJava言語仕様の拡張をおこなった中心人物のJoshua BlockとNeal GafterがGoogleに転職しているのだ.


最後に,世の中にまったく問題のない勤務先はありえない.だから,自分の働く場は自分で作らざるをえないだろう.ただし,自分を受け入れようとしない場というのは確実にあり,そこで働くのは本当に不毛だ.