企業におけるオープンソースの意義

昨日,某大企業の社員で,オープンソースコミュニティへの貢献が高くて有名な某氏が,会社にそれを咎められて念書を書かされたというとんでもない話を聞いた.


最近痛切に感じるのは,日本企業のソフトウェア戦略は本当にこれで大丈夫なの?ということである.もうすでに,根幹となるソフトウェア技術はほとんどすべて北米企業の手に握られている.また,基本ソフトウェアを単独企業で開発することはコストに見合わないために,オープンソース開発されるようになっているが,それに参加している日本人もまだまだ少ない.


これは,基本技術や基本ソフトウェアをおろそかにしても,応用技術や応用ソフトウェアで十分利益を得られると思っているからだろうが,最近は高度な応用をしようと思っても,根幹をがっちり握られてしまって身動きがしにくく,今から基礎部分を自社開発しようとしても,追いつくのもとても困難で困ったという話も周囲で聞くようになった(今更,そんなこと言うんじゃない!と言いたくなるが).今からでも,事業に関連する基本技術部分にはしっかり食い込み,それに対する影響力や発言力を保持しておかなくては,もっと困ることになるのではないだろうか?


また,実は私の会社は持株会社であり,彼の会社はその事業会社の一つであるのだが,複数の事業会社から,営業の場においてIBMに勝てないので,オープンソース関連の技術サポートをしてほしいという強い要望が上がってきている.


彼の会社はあまり困っていないようだが,それは彼を含めた優秀なオープンソース貢献者が多いからではないだろうかと思っている.たぶん,私の会社でOSIからTCP/IPへの変遷の時に起こったように,彼らが弾圧に屈せずに耐え抜くことは,会社の将来を左右することになるだろう.


問題なのは,その時に社内で評価されるのは彼らではない可能性があることだ.たとえば,下請け企業に丸投げしてパッチを作らせたり,なんの貢献も実績もないのに社内的な工作だけでトップに座る管理職だけが,いい思いをするかもしれない.


一体,世界を相手に活躍できるような(=ただし日本では規格外の)有能でアクティブな日本人ソフトウェア技術者が,日本企業で恵まれる方法は存在するのだろうか?私の知人達のように,有能であるが故に日本に受け入れる場がなくなってしまい,シリコンバレーで働かざるをえないのだろうか?