Fonts & Encodings(Oreilly & Associates, Inc)

オライリージャパンの某編集者に,今度こういう書籍が出たんですけど…と,次の本を献本して頂いた.

Fonts & Encodings: From Advanced Typography to Unicode and Everything in Between

Fonts & Encodings: From Advanced Typography to Unicode and Everything in Between

作者のYannis Haralambousはギリシャ人で,原著「Fontes & codages」はフランス語で書かれていた.この本は,P. Scott Horneが翻訳した英語版であり,1000ページを少し越え.約1100ページの「CJKV Information Processing」と並ぶ大作である.原著がフランス語ということで,購入に二の足を踏んでいた人も多かったようだが,これで心おきなく買えると思う.なお,本書の表紙の動物は「鹿」である(Amazonでは青色の表紙だが,私が持っているのは赤色である…なぜ違うんだろう?←追記:Amazonには書籍発行の数ヶ月前に表紙カバーデータを送ってプロモーションするのだが,本書はその際はXML関連書籍と同じカテゴリだったので緑色だったのだが,発刊間近にやはりCJKVやUnicode Explainedと同じカテゴリの赤色に変更されたらしい).
詳しい内容は,オライリーのサイトを見て頂きたいが,文字コードUnicodeの話から始まり,MacintoshWindowsX WindowTeX,Webページなどの各環境におけるフォントの話や,英文書体の歴史や分類,フォント関連ツールなどにも言及し,各フォントフォーマットが付録に付く,非常に資料性の高い一冊である.
残念ながら日本語訳の可能性はあまりないように思う.というのは,まずこの出版業界が不景気な時に分厚い翻訳を出しにくいということと,「CJKV日中韓越情報処理」と異なり,日本固有の記述が少ないために,日本語に訳したからと言って売り上げが伸びるとは思えないからである.ただ,この分野の人達は資料として一冊持っておきたいと思うかもしれない.
なお,ざっと目を通した時に,本書の55ページの「Philosophical issues: characters and glyphs」という節で,花園大学の師 茂樹さんの"Surface or Essence: Beyond Character Model Set"(邦題は「表層か本質か ―符号化文字集合モデルの限界とその克服―」)という論文が引用されているのを見つけた.この論文は,京大の守岡さんが開催した書体・組版ワークショップで発表されたものであり,著者も「Using OpenType-based Fonts with Omega」という発表をされていたようである.興味があれば,師さんのブログも見て頂きたい.