竹内郁雄教授最終講義「研究・開発は楽しく」(東京大学)

3月3日に東京大学で竹内郁雄教授の最終講義がおこなわれた.

なお,今回は参加者が多かった他の最終講義の参加人数から推測して340名の会場を用意したのだが,予想をはるかに上回る参加人数(400名くらい?)で,一部の人達は立ち見になってしまった.また,鵺シール・竹内郁雄最終講義スペシャルバージョン(普通は文字がオレンジ,これは文字がブルー)も300枚用意したのだが,全然足りなくて一部の人達には渡すことができなかった.この場を借りて準備不足をお詫びしたい.
なお,最終講義の様子は二台のビデオカメラで撮影してある.大学の許可が出れば,公開されるかもしれないので,その時はこのブログでもお知らせしようと思う.
さて,今回の講義の題名は「研究・開発は楽しく」である.竹内先生によると,通常の最終講義で喋る内容はすでに別の場所で喋ったので,それは講演の資料として配ることにして,最終講義では別の話にしたいということだった.その後知らされた題名を聞いてちょっとびっくりしたが,私は今回の講義の内容は情報処理分野の研究者・開発者に対して送る竹内教授のメッセージだと思っている.若かりしころのエピソード,電電公社・NTT在籍時代のとんでもない話(爆)やユニークな,TAO/ELIS開発時の数々の逸話,Lispというプログラミング言語の本質など,様々なことを話して頂いたと思うが,その根底にあるのは「人生と仕事を真面目に存分に楽しめ.そうすれば,成果はその後についてくる.」ということだろう.ただし,その裏には補食(当時存在した残業すると支給されるご飯.Googleの只飯のようなもの)を食べて終電間際まで仕事をし,それなのに朝4時にインターネット接続の障害が起こるといきなりメールが飛び交ってリモートで問題を解決する(本当に,みんないつ寝ていたんだろう?(笑))ような真摯さがあったことも忘れてはならない.昨今,企業も大学もかなり締め付けが厳しくなってしまったが,竹内教授の最終講義を聞いた人は,信念を持って仕事は楽しくやって頂きたいと思う.
最終講義は爆笑ものであっただけでなく,以下の最後のスライドのように非常に含蓄のある言葉も沢山あったと思う.

最後に講義中で紹介された二冊の本「初めての人のためのLISP[増補改訂版]」,「ガベージコレクションアルゴリズムと実装」を紹介しておこう.特に「初めての人のためのLISP」を読むと,「研究・開発は楽しく」という哲学を理解して頂けるのではないかと思う.

初めての人のためのLISP[増補改訂版]

初めての人のためのLISP[増補改訂版]

ガベージコレクションのアルゴリズムと実装

ガベージコレクションのアルゴリズムと実装