Web関連研究会は憂鬱か?

すでに知っている人も多いだろうが,IT関連学会は憂鬱らしい.

http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NC/20060116/227309/

私は仕事柄,Web関連研究会に参加することが多い.最近参加したのは,情報処理学会のネットワーク生態学研究会のシンポジウムと,電子情報通信学会のWebインテリジェンスとインタラクション研究会である.

http://www.jaist.ac.jp/~yhayashi/4th_webology.html
http://www.ieice.org/~wi2/

これでびっくりしたのは参加人数で,前者は約130名,後者は約150名らしい(伝聞なので,少々違うかもしれない).まあ,後者は関東で交通の便も良いから納得するにしても,後者は関西でも少々遠い場所である(ホテルの周囲に居酒屋もコンビニもなかったのにはびっくりした).また,企業からの発表や参加も結構多いとのこと.Web関係は比較的好調のようである.また,既存研究会でも,積極的にWeb研究を受け入れたり,Web研究にシフトしているようである.

Webの研究の何が面白いかというと,そのリアルさであろう.たとえば,アルゴリズムなどの基礎的な研究であろうと,Webに適用すれば,現実世界に存在する生々しい一面を切り出してくれる.もちろん,それは高負荷,膨大なデータ,スパム,アダルト情報などの暗黒面との戦いでもある.それゆえに,現実世界との距離が近く,企業からも歓迎されるのかもしれない.

昔はWeb研究者は大変だった.というのは,従来は小規模の統制データに対する研究が中心であり,そのような研究者が論文を査読する機会が多かったからだ.たとえば,よくある評価方法は精度とリコール(それぞれ検索ミスと検索漏れだと考えて頂きたい)なのだが,たとえば「Webの膨大なデータに対してリコールを示せ」と言われたらあなたはどうするだろうか?(苦笑)また,スパムは処理の大きな障害になるのだが,「スパムって何?そんなの重要じゃないよね.」という研究者もいるのである.つまり,Web研究を評価するためには,ある狭い分野の専門家であるだけでなく,Webにおける現実を直視し,ある程度の常識的な知識を持っていることが必要になるのだ.さらに,絶対十分なほど詳細な解析が不可能な対象であるゆえに,ある種の直感が働かねばならない(この点は自然科学や社会学に近いところがあるのかもしれない).その点ではこのように研究アクティビティが活発になり,互いの知識が共有されるのは喜ぶべきことだろう.

あと,大学の公募があればいいのだが,残念ながらこの新しい分野を指定して教授・助教授を公募している大学はほとんどないのが現状である.