送別会

三軒茶屋のイタリア料理店ペペロッソで村上健一郎さんの送別会.

村上さんはNTTのインターネット技術を支えてきた一番のキーパーソンで,日本で最初に海外にIP接続し(AS番号が3桁!),日本で最初にTCP/IPプロトコルスタックを実装し,日本で最多のRFC執筆者だ.Ciscoを日本に紹介したのも彼(電源やケースが気に入らず特注していたので,初期のラインナップには彼用のNTTマーク入りのものさえある)だし,本当に業績を挙げきれない.また社内だけでなく,大学,企業など非常に広くサポートしてもきた.彼がいなかったら今のNTTは存在しえなかったと言える.ただし,論文数だけは少ないのは,竹内郁雄教授(村上さんの元上司)から脈々と続く伝統(?)か.

もし,今上層部で他に「俺が立ち上げたんだ」と言っているような人がいたら,そいつは嘘つきで信用できないと断言してよい(苦笑)技術的な質問を一つ二つしてみれば,すぐ馬脚を現すだろう.というのは,初期に「アングラネット」と呼ばれていたように,基礎研の研究者を中心に社内でボランティアで立ち上げたが,OSI技術を普及させようとする社内,インターネット技術を敵視する社外(郵政省とか)から弾圧を受けていたからである.有益な貢献をした者は,その抵抗に屈せず意思を貫き通したわけで,そのような人間は半官半民のNTTでは評価されにくいが,元NTT副社長の青木利晴さん(NTTデータ社長を経て現在同社相談役)は,彼らを「愚連隊」と呼び,硬直化した組織の人間では見ることができない将来を見据える者達として大事にしてきた.彼の名前が日本で知られていないのは,郵政省の手前,常に大学の先生達(慶応大の村井先生とか)を表に出すようにしてきたからにすぎない.村上さんは,他のパイオニアのように先駆者としての立場を金儲けや立身出世に利用することはせずに,技術者を貫き通した.

その村上さんが,4月から法政大学ビジネススクール イノベーション・マネージメント研究科の教授になる.文系学部とは,ちょっと意外かもしれないが,最近技術の経済学的側面に興味を持っているのと,時間が比較的自由だかららしい.竹内郁雄,後藤滋樹という二大巨頭が卒業した時にも一時代が終わったなという気がしたが,村上さんの卒業にあたっては,日本に影響を与えてきたNTT計算機科学文化が完全なる終焉を迎えたという気がする.

NTT関係者に限定されるが,彼の最終講義は3月25日で,題名は「我が闘争」(仮題).彼の半生が語られる…予定…らしい(笑)これは,絶対聞き逃せないっ!

そうそう,ペペロッソは,スズキのマリネと,ボッタルガのパスタ,ゴルゴンゾーラのケーキが無茶苦茶おいしかった.